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東京高等裁判所 平成元年(ネ)573号 判決 1989年9月13日

控訴人 黒木義秋

黒木良人

右両名訴訟代理人弁護士 鈴木国昭

被控訴人 三和信用金庫

右代表者代表理事 日野太郎

右訴訟代理人弁護士 上條文雄

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

理由

一  当裁判所も、被控訴人の控訴人らに対する本訴請求は全部正当として認容すべきものと判断する。その理由は、次に付加する外、原判決理由説示中の控訴人らに関する部分と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決書八枚目裏三行目の「ないし第八号証」を「、第二、第八号証中の高千穂自動車株式会社及び熊迫一男各作成名義部分、甲第三ないし第六号証と成立に争いのない甲第七号証」に改め、同五行目の末尾に続けて「そして、請求の原因4記載の事実は当事者間に争いがなく、昭和五五年七月一六日までに控訴人らに本件訴状が送達されたことは記録により明らかである。」を加える。

2  同九枚目表七行目の「甲号各証中」を「甲第一、第二、第八号証中のその余の作成名義部分が真正に成立したことは前記のとおりであり、甲第一〇号証中の」に改め、同一〇行目の「秋山治徳の証言」の次に「、同証言により成立が認められる甲第一三号証」を、同裏二行目の「締結し」の次に「、次いで、同年一二月二二日、右保証債務の極度額を、別に債権額または極度額を定めて保証したもの及び将来保証するものを除き、一〇〇〇万円に制限することを約し、さらに、請求の原因1の(一)及び(二)の貸付けの際、右貸付けによる高千穂自動車株式会社の債務を連帯保証することを約し」をそれぞれ加える。

3  同一〇枚目裏八行目の「足りず、」の次に「原審証人鈴木良子の証言も、前記甲号各証中の黒木睦義名下の印影が同人の意思に基づいて顕出されたこととは必ずしも相容れないものではなく、」を加える。

4  同一一枚目表一行目の「弁論の全趣旨」から同三行目の「甲第八号証」までを「当事者間に争いがない。しかし、前掲甲第八号証、当審証人小藤田修の証言、同証言により成立が認められる甲第二二号証の一ないし一〇と原審証人秋山治徳の証言」に改める。

5  同一一枚目表八行目から同裏二行目までを「成立に争いのない乙第七号証、原本の存在、成立とも争いのない乙第一四、第一五号証と原審証人秋山治徳の証言並びに弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、昭和五一年以前から高千穂自動車株式会社との間で信用金庫取引をしていたが、その取引上の債権を担保するため、同年六月に同会社の代表者である熊迫一男から同人所有の宮崎県小林市大字南西方字熊迫二一一番四畑六一四四平方メートルにつき極度額を二〇〇〇万円とする根抵当権の設定を受けたこと、右極度額は、昭和五三年九月に三二〇〇万円に変更されたこと、被控訴人は、右担保物件の価額をその当時において五五〇〇ないし五六〇〇万円と評価していたため、その外には熊迫一男と黒木睦義の保証をもつて足りると考えていたこと、ところが、その後、高千穂自動車株式会社が倒産し、右担保物件について競売手続が開始されたところ、当初の見込みと異なり、評価人の評価額は僅かに一八四万三〇〇〇円であつたこと、控訴人らは、本訴の審理の過程で、被控訴人に対し、五〇〇万円の和解金の支払を骨子とする和解案を提示したが、これに対し、被控訴人は、右担保物件の売却価額をみて諾否を決することとしていたところ、その評価額が前記のとおりであつたため、控訴人らの提示した金額では和解することができないとして、その和解の申出を断つたこと、以上の事実が認められる。しかしながら、右事実をもつては、いまだ、被控訴人の本訴請求が権利を濫用しまたは信義則に反するものとはいい難く、他にこれにあたるといえるような特段の事情は認められない。また、控訴人らは、黒木睦義が昭和五二年一月三一日にした保証は、いわゆる包括根保証であるから、身元保証法五条を類推して、保証の責任額を制限すべきであると主張するが、前記のとおり、右保証については、その後極度額を一〇〇〇万円に限定することを約しており、しかも、本件請求債権は、保証の極度額を一〇〇〇万円に限定することを約した後に貸し付けられたものであるから、控訴人らの右主張は本訴請求とは前提を異にするものであつて、この点で既に理由がないといわなければならない。」に改める。

二  そうすると、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であつて、その取消しを求める本件各控訴は理由がない。

よつて、本件各控訴を棄却する

(裁判長裁判官 松岡登 裁判官 小林亘 小野剛)

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